教育つれづれ

第35話 子どもも人間関係づくりに悩んでいる

平成15年7月20日

 今から20年ほど前のことである。中学校でつっぱり生徒と毎日格闘していたころだ。つっぱり生徒のスタイルは確かに今と違うが、本質的には今も変わらない。基本的には怠惰で、えらいことをやろうとは思わない。楽して暮らそうというタイプで主張もない。少なくとも自分が接してきたつっぱり生徒はそんなものだ。
 ところが大きく変わったのは、つっぱり生徒を囲む周りだ。当時は体中から正義感を漂わせ、果敢につっぱりに物言える生徒がどの学年にも存在していた。昇降口で「学生服のホックをちゃんとしろ」と呼びかける風景は日常的であった。なぜできたのか。実は互いの領分を知っていて、水面下では分かり合っていたからである。人間関係がちゃんとできていたのである。これはごく一部の生徒に限ったことではない。教室ではつっぱり生徒が学級の一員として存在していたのである。だから教師に対してつっぱっても、仲間にはつっぱらないのである。
 最近は、寂しいことに生徒たちが人間関係づくりに悩んでいる。教室の仲間にさえ、気を遣っている。ましてや、つっぱりと人間関係を持とうという生徒は少ない。だから、つっぱりは仲間にもつっぱるのである。人間関係ができない一つの現象である。大人の世界も同じ。他人は他人。関わらない方がよいと考える大人の増加。学校は社会の縮図である。
(愛知のPTA 北尾張版 15年8月号に掲載)

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