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中学校数学3年
関数のおもしろさを味わう自作ソフト「こちら電報局」

玉置 崇:愛知教育大学附属名古屋中学校教諭


わいわい生き生き授業が実現
 表1 指導案 ▼
学習活動指導上の留意点評価の観点
【問題把握をする】
  • ソフトの操作方法を理解する。
  • A電報局、B電報局、C電報局の料金体系は異なっていることを知る。
  • 教師のコンピュータ画面を転送してソフトの概要を説明する。
 [教師がパソコン使用]
操作方法が分かったか。

問題を把握することができたか。
A電報局、B電報局、C電報局の料金体系を調べよう。
【個人追求をする】
  • いろいろな電文を入れ、関係を見つけようとする生徒。
  • 文字数と料金との関係を調べる生徒。
  • 文字の種類に注目して関係を調べる生徒。
  • 文字数を1文字増やすごとに、どのように料金が変わるか調べる生徒。
  • 同じ電文を入れ、比例関係を確かめる生徒。
  • A局、B局、C局の料金体系についていろいろな情報を基に考えさせる。
  • 自分の予想をコンピュータによって検証させる。
  • 自分の考えを様々な方法で表現させる。
  • 早くできた生徒には、自分の考えを人にわかりやすく伝えるためにはどうしたらよいのかを考えさせる。
 [生徒がパソコン使用]
意欲的に取り組もうとしているか。

自分なりに料金体系をまとめることができたか。
【集団追求をする】
  • どんな情報を基に、どのようにして考えたのか説明する。
A電報局
料金=20円×総文字数
B電報局
料金=30円×総漢字数+10円×総ひらがな数
C電報局
料金=基本料金+5文字ごと40円(基本料金=15文字まで340円)
  • 関数の意味について確認する。
  • どのように情報を集めようとしたか、なぜそのように考えたかを発表させる。
  • 料金体系については、いろいろなまとめ方を発表させる。
  • 実際の料金体系表を見せるとよい。

     25文字まで26〜30字
    通常電報340円380円

     
  • 階段関数について、ここで新たに理解させる。
 [必要に応じてパソコン使用]
それぞれの局の特徴が理解できたか。

階段関数について理解できたか。
【まとめをする】
  • 例文に対応した一番安い局を考える。
  • 学習したことが十分活用できるような例文を提示する。
 [必要に応じてパソコン使用]
学習したことが活用できたか。
 指導案は、表1に示しました。
 授業前に、こんな質問をしてみました。
 「今までに、電報を打ったことのある人は?」という問いで、さっと手が上がった一人を指名。
 「僕は、叔父さんの結婚式のお祝い電報を打って、新婚旅行のおみやげをもらいました」と、笑いとともに授業が始まりました。
 「今日は、みんなに電報を打ってもらいたいと思います。ところで、NTTに対して第二電電があるように、コンピュータの中には、A・B・Cの三つの電報局があります。どこの電報局で打つと一番安いのか探ってほしいと思います」という投げかけに、生徒達は早くやってみたいという意欲的な表情を示してくれました。生徒達のはやる気持ちを抑えながら、このソフトの使い方(電文入力の仕方、例文の使い方、料金表示方法)を簡単に説明しました。
ぼくカメ 本校(愛知教育大学附属名古屋中学校)のコンピュータ教室には、生徒用に23台のコンピュータが入っています。したがって、二人一組になっての課題解決がさっそく始まりました。
 指導者にとって、一番楽しみなのは、生徒達がどのような電文で、三つの電報局の料金体系を明らかにしてくれるかということです。入力する電文を見れば、その生徒の思考がどれだけ深まっているかがわかります。例えば、解決への見通しを持って取り組んでいる生徒の電文には、規則的な変化が見られます。
 また、集団での話し合いがより焦点化できるように、生徒達のいろいろなアプローチのしかたをできる限りとらえておくことが、とても大切になります。生徒の活動が簡単に記録できるようにメモ用紙を持って、生徒の間をぐるぐる回って、情報収集を一生懸命しました。
 まず、だれでも最初は、ちゃんとした電文を入力します。それも電報であることをかなり意識して、友達に緊急に知らせたいメッセージなどを入力する生徒もいました。
 しかし、すぐにそれでは問題解決ができないことに気づきます。むやみに電文を入力しても、関数関係が見えてきません。電文の何の違いによって、料金が変わってくるのかを発見することが、解決への鍵となります。電文の長さの違いなのか、電文に使ってある文字の種類の違いなのか等、観点を決めて電文を少しづつ変更して、関数関係を見つけていくことがポイントとなります。
図1 清水君のノート ▼
  • 電文が、ひらがなの場合
    A電報局 1文字20円
    B電報局 1文字10円
    C電報局 340円
     
  • 電文が、漢字の場合
    A電報局 1文字20円
    B電報局 1文字30円
    C電報局 340円
     
  • 電文が、カタカナの場合
    A電報局 1文字20円
    B電報局 0円
    C電報局 340円
画面写真
<わかったこと>
A電報局は、どんな文字でも、1文字20円。
B電報局は、ひらがな10円、漢字30円、その他の文字は無料。
C電報局は、15文字まで340円。5文字ごとに40円ずつ増える。
図2 小林さんのノート ▼
  • 電文→あ
    A電報局 20円
    B電報局 10円
    C電報局 340円
     
  • 電文→ああ
    A電報局 40円
    B電報局 20円
    C電報局 340円
     
  • 電文→あああ
    A電報局 60円
    B電報局 30円
    C電報局 340円
画面写真
<わかったこと>
A電報局は1文字20円
B電報局は1文字10円
C電報局はいつも340円
図3 山田君のノート ▼
  • 電文→こんにちは
    A電報局 100円
    B電報局 50円
    C電報局 340円
     
  • 電文→こんにちは、
    元気です。
    A電報局 180円
    B電報局 130円
    C電報局 340円
     
  • 電文→こんにちは、
    こんにちは
    A電報局 200円
    B電報局 100円
    C電報局 340円
画面写真
<わかったこと>
C電報局はいつも340円
A電報局は1文字20円
 上(図1〜3)に、生徒達の出した主な電文と、そこから導き出した考えを紹介します。このように電文が自由に入力できるため、電文は十人十色ということになりました。
 入力した電文は、すべて画面上に残っていますので、自分の取り組みをわざわざ記録しておかなくてもよいという利点があります。逆に、取り組みの経過はわからなくなりますが、一度料金を出した電文でも、加工し直すことができますので、それに気づいた生徒は、少しずつ電文を手直ししながら、料金体系を能率的に見つけようとしていました。
 ここにあげた三人の生徒の考えは、すべて正しいというわけではありませんが、それぞれの生徒がコンピュータに働きかけて得られた情報を基に、判断した結果なのです。わたしカメ先生集団での話し合いでは、一人ひとりの判断を出し合い、それぞれの考えが不十分なところを補うわけです。この話し合いで、判断するための情報は豊富になりますので、三つの局の料金体系を確定することは十分できるわけです。
 また、いろいろな思考の観点がわかってきます。例えば、ひらがなと漢字ばかりの電文を考えていた生徒は、アルファベットやカタカナが混ざった電文を試した友達の考えは、大いに参考になるはずです。
 実際の話し合いの場では、最初に指名した生徒から、次のような考えが発表されました。
  • A電報局は、どんな文字でも、1文字20円。
     
  • B電報局は、ひらがな10円、漢字30円、その他の文字は無料。
     
  • C電報局は、15文字まで340円。5文字ごとに40円ずつ増える。
そこで、どのような電文から、このような考えに至ったのか説明させました。説明の時には、LANを活用して、発表者のコンピュータ画面を一斉に転送することで、考えの経緯が他の生徒によく分かるようにすることができました。特にB電報局は、漢字とひらがなしか料金として加算されることがなく、仮にカタカナばかりで電文を打つと、料金はただになってしまうことに気づいた生徒は少なく、発表者の細かな観点からの追求に驚いていました。
 また、同じ電文を繰り返すことで、例えば、「あ」「ああ」「あああ」のように電文を入力し、料金がそれに伴って、2倍、3倍となれば、正比例の関係が潜んでいることを見つけることができることが話題となりました。
 授業の終わりには、学習した成果を確かめるために、「来週の月曜日に、研究室に伺います」という電文は、どこの局を利用すれば一番安いかを考えさせました。

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