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中学校数学3年
関数のおもしろさを味わう自作ソフト「こちら電報局」

玉置 崇:愛知教育大学附属名古屋中学校教諭


関数のおもしろさを味わわせたい
ぼくカメ 中学3年生の関数単元では、2乗に比例する関数をはじめ、いろいろな関数に触れさせることになっています。例えば、水道料金や小包郵送料金などは、どの教科書でも取り上げています。世の中には、一方が決まれば他方も決まるといった関数関係にあるものはたくさんあります。教科書では、数学が日常に生きていることを実感させる意味もあって、こうした身近な例を取り上げているのです。そして、生徒達が、関数の学習を生かして、積極的に世の中の関数関係を見つけたり、関数を活用したりすることを願っています。
 ところが、実際の授業となると「世の中で関数関係にあるものの例をあげてごらん」と投げかけても、生徒の生活経験が乏しいこともあって、なかなか多様な答えは出てこないのではないでしょうか。しかたなく教師側から「実は、水道料金は基本料金というのが決められていて、使用量に伴って、一定の料金が・・・」などと説明するしかありません。これでは、せっかくの関数の学習も、生徒達にとっては「関数の勉強って必要なんだろうか」といった感想を持たせてしまいます。また、「とにかく式とグラフが書ければいいや」などといった、学習しても効力感のない感想を生み出してしまうのではないでしょうか。
 少しでも関数のおもしろさを味わわせてやりたい、関数の有用性を感じさせてやりたい、こんな思いから、ソフト「こちら電報局」を作りました。

自作ソフト「こちら電報局」のメイン画面

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  1.  メイン画面に移動すると、「電文を入力してください」というメッセージが表れ、学習者が自由に電文を入れることができます。電文は、ワープロ機能を活用して入力します。また、通常、電報を申し込むときと同じように、文例集も用意してあります。[f・9]キーを押すと、「合格」「卒業」「結婚」というカテゴリーが表れます。その中の一つを選択すると、
画面写真
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 それぞれ四つの例文が出てきます。例えば、「合格」の中には「難関突破おめでとう。健康に留意して、すばらしい学生生活をおくってください」といった例文が入っています。
  1.  電文入力後、料金[f・5]キーを押すと、A電報局、B電報局、C電報局の料金が表示されます。その時の画面が下の画面です。
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  1.  当然、学習者にはそれぞれの料金体系はわかりません。そのため、「A電報局、B電報局、C電報局の料金体系を調べよう」という問題が設定できるのです。
     
  2.  三つの局の料金体系は次のように設定してあります。
  • A電報局 20円×(総文字数)
  • B電報局 30円×(総漢字数)+10円×(総ひらがな数)
  • C電報局 基本料金(340円)+5文字増えるごとに40円
 関数の観点から言えば、A電報局は正比例、C電報局は階段関数、B電報局は、漢字数とひらがな数と料金との関数関係になるため、中学数学の範囲ではありません。どのようにまとめていくかは、まさに学習者のアイデアにかかっています。
  1.  学習者は、電文を入れながら入力した情報と料金との関数関係を見つけていくことになります。その際、どんな電文を入れ、どのように関係を見つけていくのか、ここに学習者の数学的な見方や考え方が表れると思います。プリント教材のように限られた情報を基に思考するのではなく、一人ひとりの考えで情報を入力し、返ってきた情報を活用していく学習は、まさにコンピュータ教材ならではの学習といえると思います。

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