第56回小牧落語を聴く会

林家こぶ平独演会
平成15年11月1日(土)

演   目
 
新聞記事・味噌豆・茶の湯

 

 

 「意外な仕草の良さ」  からむニストから

小牧商工会議所会館での「第56回小牧落語を聴く会」は、林家こぶ平の独演会。

まず、去年中日劇場でも聞いた「新聞記事」は、今回の方が好調。ただ「お前はバカか」というストレートな罵倒を繰り返さずに、二度目は「お前でなきゃ言えないな」てな風にひとひねりしたい。

二席目は、父、三平に教わった小噺「味噌豆」に続いて、先代金馬が十八番だった「茶の湯」。これが、抹茶ならむ青きな粉を、もっともらしく入れる手つきが、オヤと思うほど。三平の口座ではついぞ見たことのない良い仕草だが、それがテレビタレント口調が抜けきらぬ部分と混在。今後、どう仕上がっていくか興味深い。

落語界の”色物”的人気者だった三平。腰の低さも父譲りのこぶ平が、再来年、九代目林家正蔵を襲名する。祖父の七代目正蔵も、「どうも相スイマセン・・・」の奇声で受けた人。ふさわしく、めでたい襲名だ。(楽互家)

パンフレットより
 
 ご来場御礼申し上げます。待ちに待ったこぶ平師匠の来演です。昨夏より出演依頼をし続け、多忙なスケジュールの合間を縫って、やっと今回の実現となりました。「こぶ平師匠だよ」と知人に声をかけると、二通りの反応が返ってきます。「へぇー、早く行かないと席がないね」というのと「えっ、落語をやるの?」というものです。テレビから受ける「タレント・林家こぶ平」としてのイメージがいかに強烈かということを物語っています。
 しかし、「何かに取り付かれたみたいに」と義兄・春風亭小朝師匠が語るように、こぶ平師はこの数年古典落語に非常に力をいれ、寄席や落語会への出席も多くなり、『景清』『三味線栗毛』などで高い評価を得てきているのです。親しみやすいキャラクターに加えて、懸命さが伝わってくるような静かな味わいのある語り。きっかけは、憧れだった古今亭志ん朝師匠が亡くなる直前に話してくれた言葉だったそうです。
 「こぶ、お前は三平にはなれないんだ。僕も志ん生にはな れない。だったら自分の行き方をもう一度考えてみたらど うだ。せっかくいい環境をもらったんだから、それを磨く ことをまず考えよう‥‥」
 そのような努力・前向きな姿勢に、周りからの薦めもあり、九代目林家正蔵襲名(平成17年3月下席)も決定しました。正蔵という名跡は、七代目正蔵がこぶ平師匠の祖父にあたり、本来ならばこぶ平師匠の父である三平師匠が継ぐところでしたが、林家彦六師匠が一代限りということで昭和25年から名乗っていた名前です。約束どおり昭和56年に海老名家に返され、以降現在まで途絶えていた名跡です。
 タレント落語家・林家こぶ平から正統派噺家・林家正蔵へ。明るく、皆から好かれるこぶ平精神の横溢した、テレビでは見られない真剣な表情の古典落語を聴いてください。そして、「早く行かないと」と言ったあなたも、「落語をやるの?」と訊いたあなたも、ぜひ今日から九代目林家正蔵ファンの一人になってください。

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