第44回小牧落語を聴く会

創作落語の奇才!桂小春団治ワールド


平成12年9月24日

アルカトラズ病院・豊竹屋・職業病

パンフレットより

お運びいただきありがとうございます。オリンピックの女子マラソンが24日にあると知った時の我々の嘆きはいかばかりか。朝のスタートで本当によかった。柔道も終わったし。

さて、シドニーオリンピックの日本人の活躍でわく新聞の一隅に、豊竹呂大夫の訃報を見つけた。昨年の緑大夫(48)、相生大夫(60)につづいての58歳の若さ(この世界ではまだ若手だろう。住大夫って何歳?)での急逝は、文楽の世界にとっても大きな損失だし、ファンの我々にとっても本当に残念だ。その文楽協会の秋の地方公演が県内3会場(名古屋芸術センター/知立かきつばたホール/扶桑文化会館)で行われる。出し物は、昼が「伊達娘恋緋鹿子」(櫓を上る八百屋お七ネ)「義経千本桜」、夜が「菅原伝授手習鑑」。夜昼とも「文楽の見方」の解説がつくから、敬遠せずに出かけてみてはどうか。人形芝居というとどこか子ども臭く、義太夫といえば前時代的で大仰な芸をイメージするが、お笑い好きには「チャリ場」といわれる滑稽な場が用意されているし、音楽ファンには「くどき」という音楽的な聞きどころがあって、人形の衣装や小道具のデザインは美術的興味にも応えてくれるはず。その楽しみ方は多様だ。ただ、荒唐無稽なストーリー展開のため、あらかじめ大ざっぱな流れを予習しておくと抵抗なく入れる。

大正から昭和にかけて義太夫がずいぶん流行り、今ならカラオケ的なノリだったのだろう。町内のあちこちで誰もが義太夫を口ずさんだ時期があったらしい。落語も義太夫を扱ったネタは多く、有名な「寝床」「胴乱の幸助」「軒付け」・・・。そんな中で「豊竹屋」は、幼時「豊竹豆仮名太夫」の名で義太夫語りだった故六代目三遊亭円生しか演じ手がなく、継承者もいないとされたネタ。もともと上方ネタだったこともあり、最近林家染丸の周辺で時々演じられるようになった。

そんなわけで今日の小牧の会は、”超古典!ともいえる「豊竹屋」と、小春団治独特のキテレツな世界をちょっと理知的におかしく描いてみせる創作二席の、あわせてたっぷり三席。

今日は小春団治の魅力を「ぜんぶやる」

新作派が古典にも力量
からむニストより
「第44回小牧落語を聴く会/桂小春團治ワールド」を、小牧商工会議所会館で見た。桂春團治の6番弟子で、上方の新作派の一人。

まず、「平成紅梅亭」(読売テレビ)でも見た「アルカトラズ病院」。彼の代表作らしい。不良患者の吹きだまりの、刑務所のような病院、という意味が、患者の口から説明される。本名は丸木戸病院というのは、マルキ・ド・ドサにひっかけたのだろう−といった工夫は盛り込まれているのだが、病院をネタにしたブラックユーモアやホラーは数多い。ナンセンスの根底のリアリティーを、いま少し。

次の「豊竹屋」は、義太夫と口三味線のマニアック男が出会うという、古典の中でも今や演じて手が限られている噺だが、気合を入れて面白く聞かせた力量を買う。

最後の「職業病」は、開店したファミリーレストンの、給仕頭はもと葬儀社勤務、厨房のチーフは自衛隊出身だったので・・・という新作。キッチンでお子さまランチの旗に敬礼し、君が代を歌うくだりでひっくり返った。「子別れ」「粗忽の使者」などの古典にも通ずる着想なのが妙。(楽互家)

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