第41回 桂梅団冶・旭堂南海

平成11年12月5日

梅団冶 黄金の大黒、いかけ屋

南海 矢頭右衛門七、小牧長久手合戦

パンフレットより

師走のお忙しい中、お運びをいただきありがとうございます。大阪から落語の梅團治師匠、講談の南海師匠を迎えての会です。落語と講談との競演というのは、単なる思いつきではなく、かなり以前から世話人たちがあたためてきた企画です。近年東京の講談界では女流講談師が活躍し、大阪でも講談以外の芸人さんが講談をかけるのをよく耳にします。当地では、なかなか講談単独の会はなく、講談をナマで聴くという経験をおもちの方も少ないでしょう。
やや話は古いですが故田中総理の出世話に「太閤記」がひきあいに出されたり、毎年12月になると赤穂の浪人たちの苦労話を楽しんだりするのは、講談の作り出した人物や事件がわれわれの生活感覚の中に定着していたことの一つの証拠ではあります。もちろん封建的な義理人情の礼賛が到底今日の大衆をつかむことはできないのはいうまでもありませんが、鼠小僧といえば、実際は盗んだ金をもっぱら遊興や賭博に使ったと知ってはいても、やはりお金を貧しい人々に恵んだ義賊だし、青の洞門を開いたい善海が通行税をとって財産を築いたと聞いてもどうも信用する気にはなれません。そういったマユツバだとわかっていながらも虚構に酔うという講談の魅力を、若い人たちになんとか伝えたいということが世話人の願いの一つです。しかし、そういった事件や人物が若い人たちの間では身近な存在ではなくなってしまっているという現実もあってちょっと心配でもありますが。
加えて、そのわかっていながらはまりこむ虚構を描き出す語り(日本語)そのものを味わってほしいということも世話人の願いです。幸い、当地に縁のある戦記物の演目(小牧長久手合戦)と、時節柄にふさわしい演目(元禄繚乱もあだ討ち入り中)がならびました。落語「黄金の大黒」「鋳掛屋」はもちろんのこと、講談の魅力もたっぷりお楽しみください。

落語と講談の好競演  からむニストより

「第41回小牧落語を聴く会」は、上方の落語と講談の二人会という企画が特筆モノ。

講談も浪曲も、ユーモアの含有率が高いのは土地柄か。旭堂南海は、大阪の講談師10人の中の8番目で35歳。毎月定例の「何回続く会」などで評価される。

12月なので、まず赤穂浪士銘々伝から「矢頭右衛門七」。四十七士の中の大石主税は16歳だから今なら期末試験が終わったばかりの中学3年生。右衛門七は18歳の高校生だから、討ち入りの報道も「少年A、Bも凶行に加わる」になるーというマクラがいい。そんなギャグも入れて、落語の、例えば「源平盛衰記」などとどう違うか。本題の口調が違う。その小気味よさは聞いた人しかわかるまい。二席目は太閤記から「小牧・長久手合戦」」。

春団治の弟子の梅団治は、「黄金の大黒」「いかけ屋」の二席。前者の冒頭の、大家から呼び出しを受けて疑心暗鬼の店子たちの、ブラックユーモア的やりとりを「大家とこの猫がネソネソほうてきた」といったとぼけ口調で和らげる関西味がいい。次回は3月5日とのこと。(張扇)

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