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平成6年12月11日

演目 もうひとつの日本、看板のぴん、世帯念仏


<パンフレットより>

 暖冬とはいえ各地で初雪の便りも聞かれ、いよいよ本格的な冬の到来といった感じです。歳末のお忙しいところ、また木枯らしの吹く寒い中、わざわざお運び頂きありがとうございます。今日は笑福亭福笑師匠の上方落語を三席聴いていただきます。上から読んでも下から読んでも同じという回文の珍しい芸名を持つ師匠は、当会へは第4回以来二度目の来演となります。

 もう十年以上前ですが、大阪楳田のバーボンハウスを拠点とした「落語現代派・創作落語の会」というのがありました。そこで福笑さんは、三枝さんや文珍さんについて出演の回数が多く、若い男女の生態を描いた爆笑落語の傑作「キタの旅」「渚にて」「あげてよかった」などを次々と発表して人気を得ていました。土曜日の午後の会ということもあり、私もよく通ったものでした。

 あれから十年。福笑さんは次々と爆笑創作落語を産み続けていたのです。4年前この会で演じてもらった「瀞満峡」も、ちょっと過激で不思議な噺でしたが、福笑さんしか演じられそうにない噺でした。「アルカリ」や「爆裂研究所」など最近の師匠の大阪での活躍は、爆笑創作落語を抜きにしては語れないでしょう。そんな師匠に今日はとっておきの創作「もうひとつの日本」を演じていただきます。この一席だけでも師匠の魅力は堪能できることでしょう。他の二席は全体のバランスを考えて古典落語。創作落語とはまた違った魅力ある高座を期待してください。

 さて、落語の楽しみ方は、もちろん生の高座に接することが一番。それからレコード・ビデオ・CD・漫画やアニメまでさまざまありますが、落語そのものでなく歴史や背景・周辺の魅力を知るのには活字(本)が好都合です。街の本屋さんにはあまり落語関係の図書は置いてありませんから、なかなか手に入らないというのが実状でしょう。そこで、今回から受付脇に、落語関係の本・雑誌で手軽に読めそうなものを数種類、世話人のひとり田島さんに選んでもらい、取り揃えてみました。こちらも併せてご利用ください。

<からむニストより>

 「第21回小牧落語を聴く会」で、笑福亭福笑を三席聞いた。六代目笑鶴の4人目の弟子で、ずっと以前に、たしか大阪の島之内寄席で聞いたきりだったが、今年は、11月の東京の文芸座ル・ピリエでの独演会に続く二度目になる。

 ここ10年ほど、創作落語、つまり自作の新作で人気の人だが、からむ子は、古典に示された表現力に感服した。

 ご当人もマクラで述べるように、自作で笑いを取ると”しびれるような快感”だという。 気持ちは実によくわかるが、たとえば、池袋で演じた「ダジャレ教室」という「あくび指南」を下敷きに、カルチャーセンターを皮肉った新作など、面白いけど長すぎてダレる。刈り込めないのが自作の弱みかもしれぬ。

 今回の「もうひとつの日本」は、東京の落語芸術協会的新作よりは格段にいい、けれど「看板のピン」「世帯念仏」の満足度はそれを上回った。 「世帯念仏」など、事実上の新作に近く、観客の想像にゆだねた無言の間が、絶妙におかしい。演者の創作力が、古典を活性化している。これこそ”創作落語”だ。(楽互家)

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