不定詞形容詞用法 アイテムsomething
to eat / drink / read etc
松浦克己
something to eatを日本語にすれば「何か食べるもの」で日本語と語順が同じだが、内容は日本語の訳だけでは理解できない。地球上のものをいちばん大まかに分類すると、thingとpersonに分類される。このthingのなかでりんごとかコーヒーとか固有名ははっきりしないけど、もう一段階あげてeat
/ drink / read / といった観点で分類したときに、それはeatの分類に入るものである、というのがsomething
to eatの内容と考えられる。
この感じを、説明するのではなく、なんとなくつかませたい。私が利用しているGDMという教授法では1年生の初期にthingとpersonの区別を学習している。それをもとに、袋の中に何か入っているけど何なのかわからないような場面では、生徒はWhat
is in the bag? What do you have in
the bag? What is that?
Something is in the bag. といった英語でその場面の内容を伝えるように学習してきている。これを土台として、上のような感じを伝えるのを目標とした不定詞の形容詞用法の導入実践例です。
person / thingの指導(1年)
いろいろな絵をThat
is の文で確認しながら黒板にはっていく。机、鉛筆、バッグといったなんでもよい。boy
/ girl / man / woman / はその前に学習しており、この4枚は必ず入れておく。数としては十数枚から二十枚ぐらいの絵を黒板にアトランダムにはっていく。それからその絵を整理していく。その過程でboy
girl man
womanという人間をpersonと言い、それ以外はthingで表すことを理解させる。(もちろん日本語での説明はしない)文としては A
boy is a person. A man is a person.
A bag is not a person.
A bag is a thing. A boy and a girl
and a man and a woman are persons.
They are not things. といったものを出しながら、考えさせていく。
日本語の説明の理解ではなく、そのものの名前とそれとは抽象度が一段階上がった言い方のperson thingという言葉を理解させる。体感させると言ってもいいかも。
不定詞形容詞用法(2年生10月) Sは生徒の発言 Tは教師の発言
ちいさなバッグを二つ見せて
S:You have two bags in your hands. One is red. The other is silver.
手でたたいて一つの方にはなにも入っていないことを示す
S:Nothing is in the red bag.
もう一方のバッグは音を立ててみせて S:Something is in the silver bag.
want to の復習をする
食べ物の絵を見せて I want to eat an apple. といったように練習
S:I want to drink a cup of coffee. I want to read the book “ 走れメロス”.
S:I want to listen to a CD.
一つずつやりながら、それぞれの絵(10枚ぐらい)をまとめながら黒板にはっていく
となりどうしで練習させる そのあいだにまとめた絵を線で囲んで
to read to drink to read to listen と見出しをつける
次になんだかわからない飲み物の写真(教科書のハンバーガーショップのメニューから)を見せて
S:I want to drink a cup of うーーん えーっと cola? fanta? sprite? と生徒を困らせる
T:I don’t know.
T:What is this? S:It is something. T:Good. It is something.と言いながら
今練習した まとめてある絵のところに持っていき
to eat のところにおいて OK? S:No. 次にto readのところと順番においていき
to drink のところで OK? S:Yes と確認させ、見出しの to drink のすぐ左横にその絵をおいて
T:This is something to drink. S:練習
封筒を取り出して からから音を出してみせ S:What is that?
T:This is something と言って to eat のところにはって
S:That is something to eat. S:練習
最初に見せたバッグを出して
T:Something is in the bag. 黒板の to listen のところにおいて
S:That is something to listen to. 練習させてから サイズがわかるようにして
T:What is this? S:It is a cassette tape. バッグから出して 確認。
副教材の問題集のパターンプラクティスで口頭練習。
一般的な教え方の順序は、まず基本文の理解、それから練習、いろいろな文で練習したあと実際の現実に近い場面でどう使うか、という順序で使えるようにする(使えるようになると思いこんで指導している)。この方法では導入の部分では学習者は何もそれを学ぶ欲求も必然性も感じていない。ただ今日はこれを学習するのだ、と言われるだけ。山田先生が持ってこられた風車発電や太陽発電の実物に対して、まったく虚構の世界で言葉を使っているわけです。使っているとは言えないかもしれない。発電装置を見て、やはり実物は強いという思いを強くしました。GDMも必ず実際に手で触ったり、自分で動いたりといった教室の中のもので導入するのを原則としています。それを「ライブ」と呼んでいます。つまり一般的な教え方では最後の段階である実際の場面が、GDMでは最初の導入となります。もちろん導入だけで定着するわけではありませんが、英語教育では導入については関心が低く、どういう練習をさせるかというほうに関心が強いのですが、GDMを知るようになってから、導入の大切さや重要さを実感しています。
そして、実物から入り、知らない間に少し抽象度を上げて、一般的な内容へ移っていくようにしています。たとえば不定詞の名詞用法のwant
to不定詞では、まず目の前の「せんべい」と「クッキー」のどちらを食べたいかという場面を作り、I
want to eat a cookie.と言い、そして実際に食べる(これは重要ではないけど、生徒には重要かも)
I want to drink a glass of tea. と実物そのもののレベルで導入して、それからふだんやっている放課後の活動である部活に話題を持っていき、I
want to play tennis after school. といった目の前のことから一段階あがった文に知らない間に移っていくようにしています。
9月から話題になっている「学ばせる」と「教える」について
私の授業ではあまり意識していませんでしたが、この観点から考えてみると、不定詞の副詞用法の授業では、He
went to the board to write that number in English.
He went out of the room to bring your basket. といった目の前のことで練習(この部分が教える)してから
I came hereと言ってじっと待っていると生徒がto
teach us Englishと発言するのが「学ばせる」に近い部分になるのかなあと思いました。