正の数・負の数  p13−p17 §1 0より小さい数

世界の天気図を見せて、ここは寒いといえるところを探せと指示。
なぜ分かったの?と聞きながら、マイナス、つまり負の数の導入を図る。
何度も気温を読ませる。説明させる。一人の子どもだけで満足しない。
言えない子どもは、ちょっと待って再挑戦させ、言えたという状況を作ること。
そして、最後にノートにも書かせる。
○つけ法を使って、評価して指導に生かす。
マイナスの記号の長さ、書く位置まで気にさせること。
初めの指導が肝心。用語をきちんと教える。用語については考えさせる必要はない。
どこで考えさせ、どこで教え、何を覚えさせるのか、練習するのかを毎時はっきりして臨む。
0より小さい数がある。それなら、0より大きい数があっていい。では、0は?というように論理を大切にして授業を進める。
p17の問題5,分数、小数となると、誤答が多くなる。類題を出して定着させておきたい。
p17の4行目、これまでは、数といえば、正の数か0であったが、これからは負の数をふくめて考えることにする。という一文。重要である。数の拡張という言葉を教えても良い。

<大西貞憲さんからのアドバイス>
正の数、負の数ですが、こういった新しい概念が出てくるところは数学的なものの見方、考え方がいろいろ出ててきます。ここでは、「ないものは作る」です。
実は中学校ではいろいろと新しいものや拡張がでてきます。(文字式、有理数から無理数など)これらに共通する数学的なものの見方、考え方がこの「ないものは作る」もしくは「困ったら作る」といったものです。例えば気温の例ですが、0度より寒くなったけど、どう表現しようという発想が
大切だと思います。表す方法がなければ作る、こういう数を考えたほうが便利だから考えるという発想です。

この考え方を補強するためには、これがあると便利だ、これを導入したことで困ったことはおきない(自然な拡張である)ことを確認することが大切になります。(負の数の拡張では、結合や分配法則が成り立つことの確認または、成り立つように計算のルールを作るといったこと)

数学的なものの見方、考え方の根本は「必然」です。「考えるべくして考えた」ことを、自然に意識させることが大切だ思います。

正の数・負の数  p18−p20 §2 正の数・負の数で量を表すこと

ここのポイントは、「基準を決めて」、そこからの隔たりを正負で表すと良いことをいかに理解させるかにある。イメージを持たせるためには、やはり何度も唱えさせること。3000円の収入を+3000円で表すと、2000円の支出は?などと、繰り返し問いかけること。子どもは分かったようでもよく分かっていない。
p18は基準を0として考えた場合の例、p19は基準を0以外として、つまり目標(20題練習)として考えた例である。基本的な考え方は同じであることを押させること。
p20の「−5個多い・・・5個少ない」はしっかり理解させる。この考えはp26の負の数をたしたりひいたりするときの考えに通じるものである。

正の数・負の数  p21−p23 §3 正の数・負の数の大小

p23の3「絶対値が4より小さい整数をすべて書きなさい」という問題ができるように理解させることが一番のポイント。p21からp23の内容をすべて包括する問題となると、「絶対値が4より小さい整数を小さい順に書きなさい」(不等号を使って表す)となる。こういった問題を基礎基本の問題と考えたい。
この問題が理解できると言うことは、「数を数直線上に表すと、それらの数は、すべて、大きさの順に並び、右の方にある数ほど大きいことや、絶対値の意味、大小を表す不等号の記号」が理解できたと同じである。
また、「4より小さい整数」を「4以下の整数」と表現を変えて取り組ませておくとよい。<より小さい>と<以下>を違いを取り上げる機会は他の場面ではあまり出てこない。
不等号の記号の開き具合にも注意させておきたい。こんな細かいことと思うが、指示をしておかないと、いいかげんに書く生徒が多い。初めが肝心である。

正の数・負の数  p24−p28 §1 正の数・負の数の加法、減法(1)

ポイントの一つは、「なぜ正の数、負の数のたし算やひき算、かけ算、わり算を行うのか」をきちんととらえさせることである。教科書にあるからやるのだ!なんていうことでは実に情けない。新しい数を学んだときに、これまで行ってきた四則計算ができるのだろうか、どのように考えると、これまでと同じようにできるのだろうかと考えることが大切で、まさに数学が創りあげられてきた思考はここにあることを強調しておきたい。3年生で学習する平方根での学習でもまったく同様である。
ポイントの二つ目は、「正の数に正の数をたす計算、たとえば、2+5は、2より5大きい数を求めること」、これをきちんと理解させておくことである。このような簡単なことなら、と思ってはいけない。この思考が理解できてこそ、2−5や2+(−3)、2−(−3)の意味が理解できるのである。負の数をたす計算は「符号を変えた正の数をひけばよい」などといった見方をあせって教えてはいけない。計算をしているうちに、このような見方ができるのだ、と気づかせたい。

正の数・負の数  p29−p31 §2 正の数・負の数の加法、減法(2)

教科書p29の5行目には「これまでとは別の見方をして、計算のしかたを考えてみよう」と書いてある。しかし、子どもにとっては特にそうしなければならない理由はない。18行目の「減法は加法になおすことができる」という記述も、そうなることは分かるけど・・・、それで?という子どももいるかもしれない。(いてほしいという願望でもある。)
学習の必要感をどう生み出すか、いつも悩みところである。現在のところは、p29を読ませて、どうしてこのようなことを考えるのかと教師も一緒になって考える。そのあと、p30の問いに取り組み、2数の符号や絶対値について法則を見つけさせる。その上で「なるほど、加法ではこのような見方(p31)で計算ができるのだ。」と得心させた上で、p29に書いてあったことが大切なのだと内容の価値付けをすることにしている。

正の数・負の数  p32−p34 §2 正の数・負の数の加法、減法(2)
3つ以上の数の加法、減法について、あまりにも工夫を求めると、子どもは嫌になってしまう。要は速く正確に計算できればよいことを目標として、気づく生徒には工夫をさせればよい。
正の数・負の数  p35−p40 §3 正の数・負の数の乗法、除法(1)
当然、負の数をかけることが学習の中心である。2×(−3)を課題にすると、すぐさま交換法則を使って考える子どもがいるが、負の数が含まれた場合には交換法則が成立するかどうかはまだ確かめていないので使えないことは押さえておく必要がある。
教科書の考え方(順々に考える)は、子どもからアイデアが出てくる方がおかしい。きちっと指導する内容である。そして説明したのなら、それが自分のものになっているかどうかを自己評価させる場面が必要である。ノートに考え方を書かせるなどの場面は必ず作っておくべきである。
負の数×負の数を考えるときに、その前の考え方を生かすことができる子どもが育てば良いのである。しかし、これとて難しい。
正の数・負の数  p41−p46 §3 正の数・負の数の乗法、除法(2)
乗法と除法の混じった式では、乗法だけの式になおして計算するとよいと指導したい。そして、結果の符号を決めてから計算するとよいことをしっかりと身につけさせたい。
指数では、−1の5乗を−5と勘違いする生徒が多い。また、括弧のあるなしで、平方を判断している生徒もあるため要注意。
加減乗除を含む式の計算では、部分的に見たらこれまでの計算ばかりであることを認識させ、計算の順序を問うたり、部分の計算結果を問うたりすることを小刻みに続け、早く正確にできるように練習をさせておきたい。
文字を使った式  p52−p56 §1 数量を文字で表すこと
これまで文字は簡潔で便利である、といったことを第1時から強調しよう、強調しようと思ってきたが、a×12(円)と書いても、aの定義をはっきりさせておく必要がある。例えば、「レモン1個の値段をa円とする」というように。そうすると、けっこう書いておくべきことがあって、文字ってそんなに簡単でも便利でもないじゃないか、ということを言う生徒も出てくるだろう。小学校で学習したように、言葉の式で表現した方がよいと思う子どももいるかもしれない。
生徒の実態を見てみると、具体的な数で表すことはできるが、文字が入ったとたんに思考が停止してしまう子どもが多い。簡潔や便利であるという認識は、この単元全体で育てるものだと思い直し、とりあえず数も文字も同じものであることを認識させることを重点に置いて指導をしたい。
文字を使った式  p57−p61 §2 文字の式を書くときの約束
これはなぜそうなるの?といった理由を考えさせるものではない。このような決まりになっているのだと、小さなステップで明快に指導したい。特に(x+y)÷4を約束にしたがって表した場合、( )がなくなること、加減と乗除が混じっている式を約束に従って表す場合の指導は丁寧に行いたい。
この項では、速さを表す単位が出てくる。km/時はkm÷時間を表していて、単位を見れば計算方法が分かることにも触れておきたい。
なお、教科書の最後で扱う「式を読みとる」活動は、数学的な見方や考え方を育てるための有効な活動であることも付記しておく。