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中学校 数学
「★をつかめ」見学記

愛知教育大学附属名古屋中学校:玉置 崇 教諭

「★をつかめ」の新しさ
 授業の中でコンピュータを使うとひとことで言っても、実際にはいろいろなアプローチの方法がある。
 ひとつは、コンピュータにどんな機能があるかを調べ、その機能が使えそうな学習分野を探すケース。
 この方法で、ずいぶん数多くのソフトが作られてきた。
 もうひとつのアプローチは、いままでの教材では説明がわかりにくかった場面を探し、そこをコンピュータでなんとかできないか、と考えるケースだ。
 アニメーションの利用やシミュレーション教材、グラフを作成するツールなど、うまく教えるためにコンピュータを利用する試みが積み重ねられてきている。
 しかし、「★をつかめ」は、どうもそれらとはおもむきが違う。
 「うまく教える」ということと、どこか手触わりが違い、「教え込む」という枠を乗り越えている感触がする。
 それを可能にしたのは、課題を解くために必要な情報やルールを、自分で見つけなければならない状況を、コンピュータで作ってあるからだ。
 その状況下で、子どもたちは自由になれる。自分の力を発揮できる。
 多種多様なアイデアが許され、多種多様なアイデアが引き出される。それが生徒たちの意欲的な取り組み、知的なときめきを生んでいるように見えた。
わたしカメ 「★をつかめ」の絵や動きは単純で、いま世の中に出まわっている、込み入った筋立てやグラフィックスを駆使したゲームとはほとんど無縁にみえる。
 しかし、ゲームの楽しさは、複雑さや派手な見た目だけから生まれるわけではない。
 ゲームの中で、自分がどれだけ自分の力をせいいっぱい発揮してぶつかれるか、それがひとを夢中にさせる。
 外見の素朴さにもかかわらず、「★をつかめ」にはゲームの醍醐味のようなものがある。
 この生徒たちが大人になって2進法を使うとき、あるいは2進法ということばを聞いたとき、ふと、3月の明るい午後の教室で星をつかもうとピョンとジャンプした「人」を思い出すかもしれない、そんな気がする授業だった。
(田中啓子)

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