中学1年 課題学習

17段目の秘密


1   こんな実践です!!
  小学校でも十分できるネタです。算数・数学のおもしろさを体感できるよいネタだと思います。気軽にやれて,しかも楽しいネタです。
  今回は特に「自分の問題としてとらえる」ことを大切にして授業をしました。授業記録でその辺りをお読みいただけるとありがたいです。

2  学年 1年でも2年でも3年でも,小学校でもいい

3  単元 課題学習 「17段目の秘密」

4 授業記録(96.4.13)
 (1) はじめに
  桃陵中学校転勤初のネタである。オリエンテーション課題として、十分意味のある課題であった。自分のめざす授業イメージを最初の授業で持たせるために、ほどよい授業展開が初めからできたネタであったからだ。
 課題は小学校でも十分できるものである。このネタは、新算研での小1での公開授業で行われたものである。小1である。中1ではない。中学生には易しすぎるのではないかと思われるかもしれないが、これが結構いけるのである。昨年の明治図書発行の「数学教育」に安城の中学校での実践が掲載されていた。 また、附属での実践を基に、我が同志鈴木良隆氏が課題学習ファックス資料集(明治図書)の中でも紹介している。これだけでもおもしろいネタであることが分かっていただけるのではないだろうか。
  30分ほどの時間があればできるネタであり、初めに自己紹介や授業を受けるためのガイダンスをした後で行っても十分できる。あらかじめ17段のマス目を書いたプリントを用意しておくといい。
 自分は、縦に段数を書いた10回分やることができる枠を用意しておいた。
 (2) 課題把握
  黒板に「17段目のひみつ」と書き、窓際の一番前の子どもに、「一桁の数字で君の好きな数字を言ってごらん」と質問をした。
  「3です」
 という答えが返ってきた。特に初めの数として望ましい数はない。ただし、0というのはあまりにも特殊である。もし、0という数を言った子どもがいれば 大いにほめ、2回目ぐらいで扱うといいだろう。
  次のように1段目に3を記録させた。(黒板ではスペースの都合で横方向に段数を記しておいた)

1段目 ___ ___ ___
2段目 ___ ___  
3段目      
4段目      

そして、「2段目は先生に決めさせてね」といいながら、5を2段目に書いた。その後、1段目と2段目の和を聞いた。当然8である。その順でいくと、2段目5と3段目8の和は13となるのだが、その場合には十の位は省いて3のみを書くように指示をした。さらに2、3段ほど進めると間違いなく誰もができるようになった。
「この順で17段目までうめてごらん」という指示で、ほとんどの子どもがスムーズに17段目まで進んだ。
(3) 自分の問題としてとらえる
一人指名して、初めから段の数を発表させた。簡単なため自信をもって発表した。最後は、5になった。「同じようになった人は」という問いにも元気よく挙手があった。しかし、子どもたちの様子を見ても、何が何だかよくわからないという表情であった。当然といえば当然である。初めて出会った教師の指示に従って、簡単な計算をしたにすぎないからである。つまり、子どもたちは、やらされているにすぎないからである。「これだけでは何をやっているか、よく分からないね。隣のマス目を埋めてみよう」という問いで次に進んだ。
 先ほどと同様に、好きな一桁の整数を聞いた。今度は7という数字が返ってきた。そして、今度も2段目は5という数字を入れさせた。ここがミソである。そして、17段目まで同じようにやってごらんという指示をした。
 17段目まで終わった子どもから「おっ」というような声があがった。さっそく黒板に「おっ!」という言葉を書いた。それを見て、子どもから笑い声が起こった。『いやいやこれも立派な意見だ。「おっ」という声が出た理由はちゃんとあるはずだ』と子どもに返した。
 なぜそのような声が出たか。2回目も最後は5となったからである。だから声が自然に出たのである。
 こうなると、子どもたちの中には、次々に確かめてみたい気持ちが起こってきているはずである。教師の問題が子どもたち自身の問題として変容したのである。それが、証拠に次のような発問で、子どもからどんどん考えが出てきた。
 「今度は何をしてみたい」という発問に、「もう一度2段目を5にしてみたい」「2段目を他の数字にしてみたい」という子ども自身がやってみたいという主体的な発言があった。こうなればしめたものである。後は全体の様子を見ながら、教師は司会者に徹すればよい。
 授業では、もう一度2段目を5にして取り組ませた。やはり17段目は5になった。
 ここで、さらに子どもたちの気持ちを高めるために、次のような発問をした。
 「ここまででどんなことを思った」という発問である。
 「いつも17段目は5になるんじゃないかなあ」「2段目と同じ数字になると思う」
 限られた情報であるが、取り組んだ結果から予想をさせたのである。そして、次の取り組みの方向を明確にさせたのである。
 2段目を今度は7にして取り組むことになった。子どもたちの心の中は、おそらく17段目が5や7になることを期待しての気持ちでいっぱいであろう。ところが結果は、9となるのである。

1段目 ___
2段目  
3段目  
4段目  
5段目  
           
17段目  


 子どもたちの様子を見ていると、さっそくもう一度7で確かめ始めている子どもや他の数字で取り組み始めている子どもがいる。もちろん中には次の指示を待っている子どももいるが。また、仮説の修正を口にしている子どももいる。例えば、「奇数と偶数で違うのかなあ」というつぶやきがあった。こうしたつぶやきは実にいい。視点の豊かさを大いにほめた。
 もう特に指示は必要はない。自分の問題ととらえた瞬間から、自然に主体的な活動が始まるはずである。
自由に取り組み、ぜひとも「17段目の秘密」を発見するように激励した。そして、しばらくは机間指導をしながら、子どもの様子をつかむことにした。10回試すことができるように枠を用意したが、多くの子どもたちはわずかな時間で、あっと言う間に埋め尽くした。
(4) 発見の発表
そして、みんなの取り組んだ結果を発表して、そこから「秘密」を考えてみようと呼びかけた。次のような結果となった。

2段目 17段目

 そして、ここから考えられることを発表させた。今までの授業で出てこない考えも多く出され、初めて授業をした子どもたちの発想の豊かさに感激をしてしまった。正直、附属もどこも関係ない。やはりネタ次第であると実感した。次に出された意見を掲載しておく。

@ 2段目が偶数の時は、17段目も偶数。
A 2段目が偶数の時は、17段目の数は2段目の数の2倍をした数の一の位の数。
B 2段目が奇数の時は、17段目の数は2倍して5をたした数の一の位の数。
C 17段目の数は、2段目の数を7倍した数の一の位の数。
D 2段目の数は、17段目の数を3倍した数の一の位の数。(Cの逆)
E 17段目だけに注目して、0から7ずつを足した数の一の位の数。


最後のまとめは、一番すっきりしているCとした。しかし、子どもたちはきっかけさえうまくいけば、つくづくよく考えるものだと思った。感激した桃陵中学校最初の授業日だった。
そして、最後に「次はどんなことを考えたい」という発問で締めくくった。
 「どうして7をかけるとそうなるか考えたい」という意見が出た。当然といえば当然である。自ら問いかける子どもをこの1年かけて育てていきたいと意を強くした日でもあった。

☆ 私の実践を元にした方の実践HPへ(授業後の研究協議会記録もある)

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