15.8.22

月22日池袋演芸場 橘家文左衛門プロデュース
「夏の噺家(おとこ)たち」

「『文左衛門プロデュース』っていやぁ聞こえはいいですが、
要するに『脅し』ですよ。」

「普通は『22日空いてたらちょっとスケてもらえる?』っていうのに、
文左衛門兄さんは『22日、空けとけ』ですよ。」

「今日は(文左衛門の脅しを)断れなかった人たちが出てるんです。」

「文左衛門兄さんが『チリトテチン』というネタ出してるのに、
前座が『転失気』なんかやるもんだから、
これ知ったかぶりする噺で付くんですよ、もう楽屋はピリピリしてます。」

などと文左衛門の怖さを三三や扇辰が強調。
ホントっぽいし、ネタっぽいし……ってところがまたおかしいの。

■ゆう生「転失気」

■三三「佃祭」
この噺は先代馬生のしか聞いたことがなく、そんなイメージの噺という先入観があったせいか、くやみの場面などで適当に笑いをとるなど、ずいぶん明るく軽い噺として聞けた。口跡がよいので聞きやすく、本格派の若手として期待できそう。

■扇辰「藁人形」
やっと聞けた、この人の前座噺でない噺を。始めて生で聞く噺で、筋も本などで確認していかなかったが、なかなか味わいのある噺ですね。笑いも少なく難しいこの噺を、写実的に登場人物を描きながら、オチまで。噺の導入時に「おくま」が糠屋の娘であることをぼんやり聞いていたので、オチを聞いてから、「糠屋の娘だったんだ」と気付く。しっかりと「糠屋の娘」であることを印象づけておいてほしかった。この噺は貧乏な長屋の雰囲気が意外に伝わってくる噺ですね。

休憩

■菊之丞真打ち披露口上(三三・菊之丞・文左衛門・扇辰)
秋の披露興業に先立っての口上。以下ポイント。

三三「師匠の円菊亡き後、親代わりの文左衛門師匠に‥‥」

扇辰「一人で四席のトリを勤めます。兄さん(文)は十人だったでしょ」
文左「そう。すっごく楽だった!!」
扇辰「しかも無理矢理ねじ込んでの‥」

扇辰「(菊之丞は)母子家庭で、弟や妹がいる。だいたいそういう家庭の長男は堅気の仕事につくもんなんです。市川市役所とか。」

文左「しぐさはいいし、噺も上手いし……、林家正雀さんくらいにはなれると思います。(楽屋にむかって両手で「ここはカットして」のしぐさ)」

■文左衛門「ちりとてちん」
「みんな本格派だもんね、上手いし。なんで俺がここにいるんだろ?」確かに他の三人とは明らかに異なる芸風。でも、選んだのが本人なんだからちゃんと計算づくなのかも。みっちり演ったねぇ、この噺を。終わった後、子どもが「迫力あったぁー」と。子どもは本質を一言で突くネ。

■菊之丞「不動坊火焔」
最初「愛宕山」をネタ出ししたところ、文左衛門師から「夏に『愛宕山』はないだろ!!」と言われ、このネタに変更したとか。9時前の上がりだが、新幹線の最終に間に合わないので、涙をのんで退出。残念でした。