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平成8年9月8日

演目 田楽喰い、一文笛


<パンフレットより>

溢れ出る汗を拭きながら蝉時雨の中を歩いていたのも束の間、朝晩はめっきり秋らしくなって参りました。四日市の近鉄アートホールで行われていた近鉄寄席がしばらくお休みになったという知らせに続いて、名古屋・栄の仕出し「円生」で年十回開催されていた円生寄席が終了したという寂しいニュースを聞きました。生の落語に接する機会の少ない中京地区の落語ファンの一人として本当に残念です。歴史の比較的浅い近鉄寄席と違って、円生寄席は20年の歴史があり、故六代目三遊亭圓生をはじめとしてすっかり当地に根を下ろしていた感があっただけにとても哀しいものがあります。たくさんの高座を思い出すことができます。こっそり盗み録りをした故圓生師の「包丁」と「阿武松」は大切に今も書棚にあります。就職して同僚を誘っていったのが米朝師匠の会。最近でも、立川志の輔師匠の会などは札止めになるほどの人気でした。客席は中央にマス席がでんとはばをきかせている構造で、食事付きなのにお安い木戸銭も魅力だった覚えがあります。幕を閉じるに至った事情は知るよしもありませんんが、私たちの記憶に残るような高座に再び接することができるようになればいいなと思っています。

 さて、お運びいただきありがとうございます。当会へは二度目の来演となる雀々師匠、今回は後輩の紅雀さんを連れての登場です。紅雀さんの演題は「米揚げ笊」という初代桂文団治の作と伝えられる噺。東京では「ざる屋」という名で演じられます。「いかき」というのは当尾張地方では普通に使う言葉のようですが、「ざる」というのが標準語のようです。

 一方雀々師匠の出し物は、「田楽喰い」と「一文笛」の二席。前者は田楽を喰わんとする若い衆たちが繰り広げる爆笑編。後者は大師匠にあたる桂米朝師匠の新作で、新作でありながらも古典のあじわいのある秀作です。時間のゆるすまでごゆっくりお楽しみください。

 

<からむニストより>

 「小牧落語を聴く会」の「桂雀々パート2」を小牧商工会議所会館で聞いた。珍しく声が出づらい雀々だが、「名前はそこに出てます通り、ケイジャンジャン」というツカミからしておかしい。

 一席目の「田楽喰い」は、金はないけど口は達者という連中が、ワリカンで一杯やろうとするくだりで「男は一歩表へ出たら6人の敵があるんや!」「・・・それ、7人と違うか?」「1人は死んだんや!」には、コワいけど笑った。

 続く「一文笛」は、桂米朝の新作として有名。雀々の芸風からして意外なので、あとで聞いたら「いつもの自分と違うものも・・・」というので、すでに10年ほど前に教わったが、なかなか演じる機会がないという。米朝師の風格は望むべくもないが、スリの男にまた違った人間味が感じられ、後半聞きこませた語り口は認めていい。

 開口一番は、桂枝雀の新弟子の紅雀の「米揚げ笊(いかき)」で、発声もメリハリもいい。関西は、どんな若手でも、とにかく客をつかんで面白く聞かせる。東京の前座も、見習ってほしい。(楽屋雀)

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