1年5組で道徳の授業をするにあたって(平成16年5月19日(水)第4時限)

1 どんな気持ちで授業をするか
 子どもたちもほとんど知らない者がいい授業をできるわけはない。それを承知しながら、ここのところ自分で考えている道徳授業の流れについて、その妥当性について検証してみたいという気持ちが半分。自分の授業をたたき台として、みなさんが道徳授業について、これまでと違った角度で考えてもらうきっかけになればという気持ちが半分である。

2 座席について
 学び合うという雰囲気を少しでも感じることができる教室環境を創り出すには、教師の醸し出す雰囲気が一番大切だと考えている。座席も日常の授業に支障をきたさない程度の変更ができれば、いわゆる「コの字型」にして、互いに顔を見合えるようにするとよい。今回はそのようにする。

3 資料について
 資料は1年生の「明るい人生」から「ぼくの仕事は便所そうじ」とする。以前にこの資料をもとに授業構成を考えたことがあったからだ。子どもの実態に合わせて資料選択をするのが理想だが、「勤労精神の欠如」は、少なからずどの子どもにもあるだろうという考えで決定した。

4 授業の流れについて

(1)導入
 「これまで・・・というようなことはありましたか?」などとは問わない。意味がないと考えるからである。ほとんど瞬間に導入を終わり、資料読みに入る。

(2)資料読み
 教師が範読する。読みながら、時折、意図的に「そうか、この人は大変だったんだ。便所は7カ所もあったんだ」などと、ちょっとした補足をする。資料理解の促進を図るためだ。音声からその様子を想像する力が乏しい子どもは、ただ音を耳にしているだけで、まったく話の内容を覚えていない。そういう子どもが学級に何人かいる。

(3)資料理解の共有化
 あらすじを確認する。教師主導で簡単に行う。子どもたちに丁寧に問いかけ、細々と確認するようなことはしない。時間がもったいないからである。
 あらすじ確認で、特にとりあげておきたいことは二つ。「便所のきたなさの共有化」と「頭を金づちでぶんなぐられたくらいのショックという言葉」である。
きたなさの共有化のために、子どもたちから「こんなきたない便所を見たことがある」などと気軽に出させたい。ここで十分に出しておかないと、「頭を金づち・・・」というこの資料の中心ワードが生きてこない。この場面では、どんな汚いことを言っても許してしまう。自分も本当に汚いという表情や動きを示して、子どもの気持ちもできるだけ開放的にしておきたい。
そして、「頭を金づちでぶんなぐられたくらいのショック」という言葉を、目立つ色で、できるだけゆっくり黒板に書きたい。そうすることで、子どもたちがその理由を考え始めてくれるとうれしい。そして、その後の筆者の変容も書いておく。

(4)話し合い
 どの指導案にも、まず「話し合いをさせる」という記述がある。ところがこれが難しい。第一の問題は、話し合いに値する話題かということである。今回は、「頭を金づちでぶんなぐられたくらいのショックとはどういう気持ちなのだろう」を話題としたい。なぜならこれを機に、筆者の行動は大いに変容するからである。話し合う価値があると考えた。
 全員参加をさせるためにワークシートに「どのような気持ちから、頭を金づちでぶんなぐられたくらいのショックと書いたのだろうか。その理由を想像して書いてください」と指示したい。そして、書いている内容を巡視によって把握し、少しでも意図的に指名できるようにしたい。
 話し合いとなるように、それまでの発言について、少しでもいいので感想を述べて、その上で自分の書いた考えを発表させていきたい。それが話し合いを成立させる第一歩だと指導したい。
話し合いのゴールは特に定めない。求めることは、「頭を金づちでぶんなぐられた」という筆者の気持ちを真剣にとらえ、自分なりに考える姿勢である。友人の意見を聞きながら、互いに考えが深まっていけば最高である。が、授業は思ったように進まないのが常である。「だから授業はおもしろい」という感覚だけはプレッシャーの中で失わないでいたい。
1年5組の子どもはどのようなことを言ってくれるだろうか。同様なことでも重ねて発表させながら、逆スパイラルに学級の考えが絞られていくとうれしい。自分は意見が少しでも深まっていくように、まずきちんと意見を聞き、発表のポイントを復唱することに心がけたい。いわば、これだけの役だとも思っている。もちろん勤労の尊さや意義に触れる子どもらしい発言が続くことを願っている。

(5)まとめ:内省場面 
 「今日の授業で感じたことを書きなさい」と指示する前に、資料と現実の橋渡しをするような発問をしたい。「○さんは4月当初に△をしてくれているけど、どんな気持ちなの」などと、自分の身の回りに今日の話し合いを寄せて考えることを補助発問で理解させておきたい。そのうえで、ワークシートの左枠の中に今の気持ちを書かせたい。
 机間巡視をしながら、話し合いを通しての変容を書いている子どもがいれば、優先的に発表させ、今日の話し合いが価値あるものだったことを喜び合いたい。なければ「指名されたらまずい」というような表情の子どもを先に当て、最後はしっかり発言できそうな子どもを当てたい。子どもの言葉で授業を終わることができれば、かっこいいだろうなあと夢を描いているからである。こうして授業前は何でも書けるのだ(笑)。では、授業で。